日本版NCAA、大学スポーツ協会UNIVASとは?
Hi!あっという間に秋を感じるようになり、朝晩は冷え込む今日この頃みなさんいがかお過ごしでしょうか。
ついに10月22日に今まで色々と騒がれていた日本版NCAAの正式名称が決まりましたね。
その名もUNIVAS!大学スポーツ協会です!
実はトビタテに応募した際に”日本の大学スポーツの発展”というのは自分のサブテーマでとても興味津々なので、その気持ちと共に今回の準備委員会で紹介されたことや、本場のNCAAとの比較、今後の期待などについて触れながらUNIVASについてまとめていきたいと思います。
追記(2019/3/1)
2019年3月1日よりUNIVASが正式に発足されました。
最新ニュースなどをこちらにまとめてます。
UNIVASとは
一般社団法人 大学スポーツ協会(UNIVAS) 設立概要:スポーツ庁
2018年7月に行われた第1回日本版NCAA設立準備委員会から早3ヶ月、今回の第2回で日本版NCAAの正式名称が大学スポーツ協会:UNIVAS(Japan Association for University Athletics and Sport)に決まりました。
Japanは略称に入れなくていいんかって思いましたが、ゴロ的にUNIVASに落ち着いたんでしょうかね笑
ちなみに、UNIVASのSであるSportは複数形ではなくあえて単数形を用いることで、競技としての集合体ではなく、文化としてのSportを意味しているとのこと。
このUNIVASの理念は
「大学スポーツの復興を通じて卓越した人材を育成し、大学のブランド力強化や競技力向上を図る。もって、我が国の地域・経済・社会の更なる発展に貢献する。」
ということだそうです。
”優れた”ではなく”卓越した”という単語を選んだ理由はあるのかは定かではありませんが、カッコいいですね笑
後でまた書きますが、個人的には”地域の更なる発展”が含まれているところに感動です!
2019年から本格始動で、2025年までに400大学、60競技団体、20万人規模のアスリートを擁する組織にしていく計画とのこと。
NCAAとは
日本版NCAAと言われていますが、そもそもNCAAとはなんだということでNCAAについて少し紹介しておきます。
NCAAとはNational Collegiate Athletic Associationの略で日本語だと全米大学運動協会のことです。
UNIVASのようにスポーツビジネスとか大学ブランド力などを考えて発足されたわけではなく、20世紀初頭の大学間のアメフトで試合中の衝突などが原因で死亡事故が多発し、1905年に当時の大統領であるセオドア・ルーズベルトの呼びかけで大学スポーツの改革を促したことがきっかけでした。
1906年にNCAAの前身であるIAAUS(Intercollegiate Athletic Association of the United States:合衆国大学間運動協会)が発足し、1910年に現在のNCAAに改称されたことでNCAAの歴史が始まりました。
当初は選手の安全を守るための組織として発足しましたが、現在ではプラスして選手の学力管理、練習量の管理、大会運営、放映権の販売などを行なっており、NCAAの収益だけで約1100億円以上を稼ぐほどに大学スポーツ産業を成長させました。
NCAAが2017年度の収益で初めて$1 billion(約1100億円)を超えたという記事(英語)
現在NCAAは23の競技を運営し、1200以上の大学から4万人以上の学生が参加しています。
学生たちはNCAAの管理下で、ある一定の学力基準が満たされなければ試合に出れなかったり、学校やコーチたちも練習時間を週何時間などのようにNCAAに管理され、選手にオーバートレーニングをさせないようになっています。
こんな100年以上も歴史があり、大学スポーツ産業を確立したNCAAですが、最近では選手を商品として扱って無賃労働させているなど、色々と問題にもなっています。
米大学バスケでスキャンダル、強豪校コーチやアディダス社幹部が贈収賄 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
米大学スポーツ界を震撼させた歴史的判決の波紋(page 2):鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」 - スポーツイノベイターズオンライン
奨学金は1人780万円。大学内の「内部調査班」が選手を監視する
行き過ぎたスポーツビジネスはあれですが、勉学面や練習時間の管理、大会運営、大学のブランド力向上などは日本でも参考にすべき点です。
それを踏まえて、公表されたUNIVASの役割を紹介していきます。
UNIVASの役割
UNIVASの役割は
”大学スポーツ協会が、大学・学連と密に連携し、企業や消費者との核となり繋ぐことで好循環サイクルを実現”
することだそうです。
新しいサービスを提供する予定で、イメージとして以下のものがあげられていました。(多かったので気になるところを抜粋)
学業充実
- 学業基準の策定、普及
- キャリア支援
- 学生アスリート向け奨学金制度の創設
学業基準の策定は以前から言われていましたが、期待はしていますが難しいと思います。
日本の体育会の選手たちは勉強してなかったり、授業に出ても寝てたりというイメージが持たれています。もちろん、全員がそうではありませんがそういった選手が多いので、そういうイメージを持たれてしまうのが問題でした。
やはり、どのくらいの学業基準にするのかは難しいところだと思います。
日本の大学生の平均GPAがどのくらいかは正確にはわかりませんが、就職にGPAが要らない日本では大学生はあまりGPAを気にしていません。
友達とかでも1.0台なんかの人もいますし、周りの普通の大学生よりも高いGPAを選手に求められたら、選手へかかる重荷が増えてしまうと考えられます。
学生アスリートがこんなに勉強頑張っているんだから、一般学生も頑張ろう!みたいな風潮には恐らくならないと思うので、そこのGPAの基準をどのレベルにもってくるのかが気になるところです。
また、頑張った選手へのキャリア支援や奨学金の支給は素晴らしいと思います。文武両立をしっかり促して、将来へのキャリアに繋げていく手助けをUNIVASがしていく仕組みは楽しみです。
安全安心
- 安全、安心のガイドラインの策定、普及
- スポーツ医科学の研究
- データベースセンターの構築
- コンプライアンス、ガイドラインの策定普及
NCAAと同様に練習時間の管理などをするのだとは思いますが、中体連や高体連などの中学校や高校の部活をある程度管理できる学連がある中でも、長時間の練習がいまだに問題になっているので、体育会側がどのくらいこのガイドラインに従ってくるかはまだ分かりません。
UNIVASがどのくらい管理出来るのかにもよりますし、ガイドラインに違反した場合、どのようなペナルティーが与えられるかなどの具体案も必要になってくると思います。
UNIVASに加盟している大学の全選手のメディカルデータなどのビッグデータを管理出来るようになることで、そのデータをスポーツ医科学分野への研究に利用することができるようになるのは大きなメリットになります。
事業マーケティング
- 地域ブロックにおける大会運営への助成
- 競技映像のインターネット配信
- 大学におけるアスレティックデパートメント設置
- ビッグデータを活用したサービス開発、提供
- 国際競技大会の開催
地域開催の大会運営への助成を行うことで、地域から大学スポーツを盛り上げていくことができるとのこと。
ですが、正直なところ首都圏と地方での大学スポーツの盛り上がりには差が出てくると思われます。
大学になるとやはり1部に所属する大学は関東や関西に限られてくるし、大学数も違うので盛り上がりも都市部に偏ってしまうと考えられます。
その点、アメリカでは州に1つは強い何かがあったりするのは不思議ですね…
例えば、大学3年で行ったアイダホ州のボイシーは日本人は名前すら知りませんが、アメリカ大使館の面接で面接官にアメフト楽しんできてね!と言われるほど有名だったり、この前までいたウィスコンシン州も日本人には馴染みがありませんがアメフト、バスケ、ホッケーなど色々と強いマディソンがあったりします。
ただ、地方の方でも何部とかに関わらず、Jリーグの様に地域に根付いたスポーツ活動が出来れば、盛り上がってくると思います。
競技映像に関しては、お金になりやすいところなので期待大です。ちなみにNCAAの収益のほとんどが放映権からの収益なのでUNIVASもそこを参考にしてくると考えられます。
ただ、日本とアメリカの放映権の単価は桁違うので同じ様な作戦でいくとあまり稼げないかもしれません。メジャーリーグと日本のプロ野球は数十年前は収益が同じくらいでしたが、いまでは約10倍ほどの大差がついているそうです。
↓プロフェッショナルリーグの収入ランキング(英語)
観客動員数はあまり変わらないのにも関わらず、その差が生まれた理由というのが放映権が大きく関わっているとのこと。
しかし、インターネット配信もお金を払って日本の大学スポーツを見るか?と聞かれたら、答えに詰まるかも知れないので、そこは現地への集客で稼いでいったりするしかないのかなと思われます。
UNIVAS加入のメリット
最後に、じゃあUNIVASに加入することで学生・大学・学連・企業にどんなメリットがあるのか?
以下抜粋とコメント。
学生にとってのメリット
- 安全安心
- 学修環境とキャリア形成
- 競技環境向上
- コミュニティの形成
- 先端技術や知識の提供
- 貴重な機会と体験
1と2に関してはUNIVASの役割で説明した通りですが、3に関してはどのくらいUNIVASから資金援助が入ってくるかが気になるところですね。何部に所属しているかで変わるのかや、競技によって変わるのか。そして、そのお金はどこからやってくるのか。まず投資なのか、収益から出るのか、加入でいただいたお金をまた配るのか…
4については確かにもっとアスリートが関わる機会があったらいいかも知れません。同大学・同競技だけではなく、他大学や他競技のアスリートとの関わりの場が増えたら大きなコネクションが作られて、キャリア形成にも役立てるかも知れません。
大学の加盟メリット
- ブランド向上
- 外部資金獲得
- 指導者研修
- 表彰制度
- 研究推進
- 映像配信
1のブランド向上はNCAAの様にいけば大成功ですね。都市部だけではなく地域活性化に貢献出来ると思います。
ちなみにアメリカの大学のブランド力は本当に凄くて、アメリカの大学の名前が入ったパーカーを着ている人が日本にもいるくらい人気で、しかも有名大とコラボしてGUも大学パーカーやスウェットを販売するようになるくらいになっています。
2に関してはUNIVASからの資金だけではなく、大学が自分の大学のスポーツでもお金を生み出せるようになれば、更なる好循環が生まれてきます。
5の研究促進も期待大で、学部生や修士・博士の方々の研究サンプルデータがまとめて手に入れることが出来るのも大きいと思います。
学連のメリット
- 安全安心対策
- 助成金獲得
- 観客数増加
- 負担軽減
- 海外交流
- 映像配信
1はUNIVASが提携している医療関係者を試合に派遣し、より安全安心な対策をすることができるとのこと。
3の観客数増加について、あまり観る機会がないマイナースポーツをインターネット配信することによって、競技者および観戦人口の増加が期待されます。
5の海外交流に関しては、これが実現できるようになれば海外からのファンとかももしかしたら出来るかもしれませんし、国際大会への進出増加によって大学スポーツ界を盛り上げることができると思われます。
産業界・企業のメリット
- 人材の育成
- イメージ向上
- 人材の確保
- 商品・サービスのPR・販売促進
- データ研究への参加
3については、体育会学生はそのまま接点のある実業団に入りやすくなり、競技向上に繋がると思われます。
4に関しては、スポンサーとしてのメインポイントになってくると思いますが、アメリカの大学では学校ごとにスポンサーがいたりするので、日本は各大学ではなくUNIVASで全てを統括しようとしているのかは謎ですが、将来的には大学ごとにスポンサーがついてもいいと思います。
個人的に日本のスポーツ企業であるアシックス、ミズノやドーム(日本のアンダーアーマー)などはメインスポンサーとかになって欲しいですし、インターネットの映像配信はSoftbankやRakuten TVなどが取り合ったりするのではないかなぁと考えています。
まとめ・今後の期待
はい!発表された日本版NCAAであるUNIVASのことについてまとめたり、個人的な意見について書きました。
学業基準の策定や、コンプライアンスの策定、地域活性化、大学スポーツのビジネス化、アスレティックデパートメント設置など色々と期待大な内容がてんこ盛りでした。
トレーナーを目指している目線からすると、アスレティックデパートメント設置とともに各大学はトレーナーや設備や医療機材などの予算も増えてくるのではないかとワクワクですね。
ただ、あんまり期待しすぎて本場のNCAAと比べすぎるのは違うと思います。なんせNCAAは100年以上の歴史があるのでいきなりあのレベルに持って行こうというのは無理な話ですし、そもそも日本とアメリカではSportの文化が違います。
ちなみに2016年に始まった日本初のバスケットボールのプロフェッショナル も初年度は全体売上が約150億円とプロ野球やJリーグと比べると桁が違くて全然稼いでいないように見えますが、バスケのリーグだけで見ると前年度の10倍の売上になっていて、大きな成長が見られたとのことです。
2019年はラグビーW杯、2020年には東京五輪が日本で開催されるなど、物凄い勢いでスポーツの波がくるので、この波にUNIVASものって、NCAAを意識して背伸びをしないで、しっかりと数年で基盤を作り(最初はコケるかもしれないが)、大学スポーツ界の発展へと繋げていってくれることに期待です!
最新ニュース
2019年3月1日に正式にUNIVASが発足されました。(法人化)
UNIVAS 大学スポーツ協会 初代会長に早大前学長の鎌田氏 | NHKニュース
初代会長 鎌田薫氏(早大前学長)
副会長 有森裕子氏ら2人(五輪マラソンメダリスト)
顧問 川淵三郎氏
UNIVAS発足、大学スポーツの統括組織 筑波大や慶大などは不参加 (写真=共同) :日本経済新聞
組織の全体像や、収益や役割分担が不透明であることから、慶応大、筑波大、同志社大、関西学院大などの有力大学が参加を見送り。
不参加大学の関係者からは「UNIVASの重要性は理解しているが、要望を受けても大学内での受け入れ態勢が整っていない」などの意見もあった。
他に最新情報があれば更新していきます!
大学スポーツ最高!Bye!